【熊本消防設備点検】消火器の機能点検(抜き取り式)と内部観察|熊城防災総研

消火器の機能点検とは

 

消火器の機能点検は、消防法に基づく消防用設備等点検の一環として行われる重要な点検です。

点検は大きく「外観点検」と「機能点検」に分かれます。

 

  • 外観点検:消火器本体の変形や損傷、腐食の有無、安全栓や封の状態、圧力ゲージの正常範囲、設置場所の適正などを目視で確認します。
  • 機能点検:実際に消火器が正常に作動するか、内部の薬剤や機構の状態を確認します。外観だけでは判断できない内部の性能を把握するのが目的です。

 

 


 

 

機能点検の目的と実施時期

 

機能点検は、消火器が長期間使用されずに設置されている場合に、内部の腐食や薬剤劣化を発見するために行われます。

消火器の種類により、機能点検の対象となる開始時期は異なります。

 

  • 加圧式消火器:製造から 3年 経過後に機能点検の対象となります。
  • 蓄圧式消火器:製造から 5年 経過後に機能点検の対象となります。

 

この違いを理解しておかないと、必要な時期に機能点検が行われず、法令違反となる可能性があります。

 


 

 

抜き取り方式による点検

 

機能点検は、設置されているすべての消火器に行う必要はなく、抜き取り方式が認められています。

 

  • 対象本数:設置総数の10%以上(最低1本以上)
  • 放射試験対象:抜き取り本数のうち50%以上

対象の消火器を半年毎に順次点検していきます。

抜き取る消火器はロット別にグループ分けし、各ロットより必要本数を抜き取ります。

抜き取った消火器について以下の内容を確認します。

 

  1. 内部観察:容器内部にサビや腐食、異物、湿気がないか確認
  2. 薬剤確認:薬剤が固まったり変質したりしていないか確認
  3. 作動確認(放射試験):薬剤が規定通り放射されるか、放射距離や時間が適正か確認

 

抜き取り点検で問題がなければ、同型・同条件の他の消火器も正常とみなします。

もし不具合が見つかれば、全数点検や交換が必要です。

 


 

 

耐圧性能点検(水圧試験)

 

製造から10年を経過した消火器(二酸化炭素消火器を除く)は、3年ごとに耐圧性能点検(水圧試験)を行う必要があります。

これは容器が内部圧力に耐えられるかを確認する試験で、老朽化による破裂事故防止が目的です。

 


 

 

加圧式と蓄圧式の特徴

 

 

加圧式消火器

 

内部に小型ガス容器があり、使用時にガスの圧力で薬剤を押し出す構造です。

構造が複雑で破裂事故のリスクがあったため、機能点検は製造3年経過後が対象です。

 

蓄圧式消火器

 

容器内にあらかじめ圧力がかかっており、レバー操作で薬剤が放出されます。

破裂リスクが低く、圧力ゲージで内部圧力の確認も可能です。機能点検は製造5年経過後が対象となります。

見分け方:消火器上部に丸い圧力ゲージがあれば蓄圧式、なければ加圧式です。

 


 

 

新規格消火器への移行

 

2022年1月1日以降、設置義務のある建物では新規格消火器のみ使用可能です。

旧規格の消火器が設置されている場合、法令違反となるため、速やかに新規格品に交換する必要があります。

現在の業務用消火器は、実質的にほぼ蓄圧式の新規格品となっています。

 


 

 

機能点検をめぐる課題

 

 

1. 点検コストと交換コスト

 

機能点検、特に内部観察や放射試験は手間と費用がかかります。

新品交換費用より高額になることが多く、点検より交換の方が合理的となるケースがあります。

 

2. 蓄圧式消火器の分解点検の必要性

 

蓄圧式は破裂リスクが低く、圧力ゲージで状態確認が可能です。

そのため、分解点検の必要性が加圧式ほど高くないとの意見があります。

逆に分解・再組立てによって密封性を損なうリスクも指摘されています。

 

3. 不正報告のリスク

 

費用や手間を避けるために、点検を行わず報告書に「実施済み」と記載する不正の可能性があります。

信頼できる業者に依頼し、適正に点検を行うことが重要です。

 


 

 

まとめ

 

消火器の機能点検(抜き取り式)は、外観だけでは判断できない内部状態や作動性能を確認する重要な点検です。

加圧式は製造3年、蓄圧式は製造5年経過後が対象で、原則6か月に1回の定期点検の一環として実施します。

点検と報告義務を怠らず、安全な状態を維持することが最も重要です。

点検や交換の判断に迷った場合は、信頼できる消防設備業者に相談し、最適な対応を検討しましょう。

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