【熊本消防訓練】初期消火とは|火災の被害を最小限に抑えるための行動

■ 初期消火の基本

火災が発生した際、炎が小さいうちに消し止める行動を「初期消火」といいます。

火が天井に達する前のわずかな数分間が、被害を最小限に抑えるための重要な時間です。

木造建築では、出火からおよそ3分ほどで炎が天井に届くといわれており、

この短い時間のうちに適切な判断と行動をとることが、被害を防ぐ大きなポイントになります。


■ 初期消火の重要性と限界

火災の初期段階では、消火器や身の回りの道具を使って火を抑えることが可能です。

しかし、炎が天井や壁まで広がってしまった場合、個人での対応は非常に危険です。

危険を感じた時点で無理をせず、避難と119番通報を最優先することが大切です。

「命を守ること」が、すべての行動の基本となります。

以下のような状況では、初期消火を中止または実施しない判断が求められます。

● 火の高さが自分の背丈を超え、天井まで燃え広がっている場合

● 部屋の中に煙が充満し、視界が悪く息苦しさを感じる場合

● 初期消火を行うことで避難経路が塞がる、または避難が大幅に遅れると判断した場合

これらの条件に該当する場合は、速やかに消火を中止し、身の安全を最優先に避難してください。


■ 初期消火の手順

火災を発見した際は、慌てずに次の順序で行動します。

① 周囲に知らせる

「火事です!」と大声で伝え、周囲の人に協力を求めます。

同時に、可能であれば119番通報も行います。

② 安全の確保

逃げ道を背にして火元に向かうようにし、常に避難経路を確保します。

③ 消火器などで初期対応

消火器を火元に向けて使用します。使い方は「ピンを抜く → ホースを持つ → レバーを握る」の3ステップです。

④ 危険を感じたら避難

煙や炎が広がってきたら、直ちに消火をやめて避難してください。


■ 初期消火に使用できる器具

● 消火器

最も効果的な手段で、粉末・強化液・二酸化炭素など、火災の種類に応じたタイプがあります。

● エアゾール式簡易消火具(スプレータイプ)

軽くて扱いやすく、家庭や車内などで発生した小規模火災に有効です。

● 身近なものを使う場合

・水(紙類・布類の火災に有効。ただし油火災には使用禁止)

・濡れたタオルや毛布(小さな火を覆い、酸素を遮断する)

・鍋のふた(天ぷら油火災では空気を遮断して鎮火)


■ 火元別の対応ポイント

● 天ぷら油火災

水をかけると油が飛び散って危険です。濡れタオルや鍋のふたで覆うか、専用の油火災用消火器を使いましょう。

● カーテンなどの布類への引火

引き下ろして床に落とし、水をかけて鎮火します。周囲への延焼に注意してください。


■ 消防法に定められた「応急消火義務」

消防法第25条では、火災が発生した場合に「関係者は消防隊が到着するまで消火や救助を行わなければならない」と定められています。

この義務を負う人を「応急消火義務者」と呼びます。

応急消火義務者に該当するのは、次のような人です。

① 火災を発生させた人

例:調理中や器具使用中に火を出した本人。

② 火災の発生に直接関係した人

例:誤った取り扱いにより出火の原因を作った人。

③ 火災が発生した建物に居住または勤務している人

例:マンションの住民、会社や店舗で働く従業員など。

これらの人は、消防隊が到着するまでの間、可能な範囲で初期対応にあたる責任があります。

ただし、無理な行動は禁物であり、あくまで安全確保を優先してください。


■ 日頃から備える意識を

火災はいつ、どこで起こるか分かりません。

いざという時に慌てないためには、消火器の設置場所や使用方法を普段から確認しておくことが大切です。

また、定期的に避難・消火訓練を実施することで、実際の災害時にも落ち着いて行動できるようになります。

熊城防災総研では、事業所や施設向けの初期消火訓練・防災教育の支援も行っています。

日頃の備えが、命と財産を守る第一歩です。

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