【熊本消防訓練】消防訓練における避難誘導の重要性と正常性バイアスへの理解

火災などの災害が発生した際、最も重要になるのが「人命の安全確保」です。

そのための初動行動として欠かせないのが「避難誘導」です。避難誘導とは、火災や地震などの非常時に、建物内の人々を安全に避難場所へ導く行動のことを指します。迅速かつ的確な誘導ができるかどうかで、被害の大きさが大きく変わる場合もあります。


■ 避難誘導の基本行動

避難誘導を行う際は、以下の行動が基本となります。

  • エレベーターは使用しない

    火災発生時はエレベーターが停止・閉じ込めの危険があるため、絶対に利用しません。

  • 階段を利用して避難する

    屋内・屋外の避難階段や避難器具を使用して、できる限り地上へ避難します。

  • 扉を閉める

    煙や炎の拡散を防ぐため、通過した扉は必ず閉めます。

  • 誘導灯・避難標識を確認する

    避難口誘導灯や通路誘導灯の表示に従い、安全な避難経路をたどります。

  • 煙を吸わないようにする

    煙が発生している場合は姿勢を低くし、ハンカチや衣服で口・鼻を覆って呼吸します。

  • 声かけ・情報共有を行う

    避難を誘導する人は落ち着いた声で指示を出し、避難者をグループごとに誘導します。外国人や聴覚障害者など、状況に応じた配慮も大切です。


■ 避難誘導に影響する「正常性バイアス」とは

避難誘導の場面でしばしば問題となるのが、「正常性バイアス」と呼ばれる心理現象です。

これは、災害などの危険な状況に直面しても「自分は大丈夫」「まだ大したことない」と思い込み、避難行動が遅れてしまう傾向のことを指します。

  • 心理的な特徴

    人は普段経験しない異常事態に遭遇すると、危険を過小評価し、平常時の感覚を保とうとします。これは心を守る働きでもありますが、災害時には判断の遅れを招きます。

  • 具体例

    緊急地震速報が鳴っても「また小さい地震だろう」、大雨警報が出ても「前回も大丈夫だった」と考えて避難しない、などの行動が挙げられます。

  • 避難誘導への影響

    正常性バイアスが働くと、避難開始が遅れたり、避難指示を軽視したりすることにつながります。過去の大規模災害(東日本大震災・西日本豪雨など)でも、避難の遅れが被害拡大の一因となりました。

  • 対策

    1. 自分も正常性バイアスに陥る可能性があると自覚する。

    2. 携帯電話やテレビ、近隣住民などから客観的な情報を確認する。

    3. 定期的な訓練で非常時の行動を体に覚え込ませる。

    4. 率先して避難行動を起こすことで、周囲の避難を促す。

日頃からこの心理を理解し、「早めの判断・行動」を意識することが、災害時の安全確保につながります。


■ 避難誘導のポイント

  • 迅速な判断と行動

    火災発生からわずかな時間で煙や熱が広がるため、早い段階で避難を開始することが重要です。

  • 事前の確認

    日頃から建物内の避難経路や非常口の位置を確認し、非常時に迷わないよう備えておきましょう。

  • 定期的な訓練

    実際の災害時に慌てず行動できるよう、避難誘導を含めた消防訓練を繰り返し行うことが大切です。訓練によって役割分担や声かけの方法などを共有し、全員が安全に行動できる体制を整えましょう。


■ まとめ

避難誘導は、「訓練された行動」と「冷静な判断」によって成り立ちます。

そして、その行動を妨げる要因のひとつが正常性バイアスです。

「自分は大丈夫」と思わず、客観的な判断と訓練によって行動できる体制を整えることが、人命を守る第一歩です。

熊城防災総研では、建物や組織の特性に合わせた消防訓練・避難誘導指導を行っております。日頃からの備えが、非常時の冷静な対応につながります。

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