内装制限とは|消防法・建築基準法による違いと対策を解説

1.内装制限とは

内装制限とは、火災による被害を最小限に抑え、人命を守るために定められた内装施工のルールです。

建物の壁や天井などに使用できる内装材の種類を制限することで、火の燃え広がりを防ぎ、安全な避難時間を確保する目的があります。

内装制限は、

  • 建築基準法(火災発生時の避難安全を確保)

  • 消防法(火災の予防・初期消火・人命救助・本格消火を目的)

    の2つの法律によって定められています。

それぞれ目的や範囲が異なるため、両方の基準を理解しておくことが重要です。


2.建築基準法による内装制限

建築基準法では、「火災の初期段階における安全な避難経路の確保」を目的としています。

法的根拠は建築基準法第35条の2および建築基準法施行令第128条の4~5にあり、以下のような建物が対象です。

対象となる建物の例

  • 劇場・映画館・演芸場・集会場など

  • 病院・診療所・ホテル・旅館・老人ホーム・共同住宅

  • 百貨店・飲食店・カラオケ・バー・遊技場など

  • 地下にこれらの用途を持つ建物

  • 延べ面積500㎡以上の3階建て以上の建物 など

制限の内容

天井または壁、あるいは両方に使用する内装材を、

  • 不燃材料

  • 準不燃材料

  • 難燃材料

    のいずれかに限定しています。

ただし、床から1.2メートル以内の腰壁部分は対象外とされています。


3.消防法による内装制限

消防法では、火災の拡大防止や初期消火・避難支援を目的としており、建築基準法とは別の観点から規定されています。

対象となる建物

消防法で「防炎防火対象物」と定められた以下の建物などが該当します。

  • 高層建築物(高さ31mを超えるもの)

  • 地下街

  • 病院、診療所、助産所

  • 老人ホーム、デイサービス施設

  • 飲食店、カラオケ、バーなどの遊興施設

  • ホテル、旅館、百貨店、マーケット、遊技場 など

消防法の特徴

建築基準法との大きな違いは、壁全面が対象になる点です。

腰壁部分であっても難燃以上の防火材料を使用することが義務付けられています。

また、消防法では以下の消防設備の設置も求められます。

  • 消火設備(スプリンクラー、屋内消火栓など)

  • 警報設備(自動火災報知設備、非常警報設備など)

  • 避難設備(誘導灯、避難はしごなど)


4.内装制限を緩和できる条件

店舗や施設のデザイン性を確保するため、一定の条件を満たすと内装制限が緩和される場合があります。

ここでは代表的な緩和条件を紹介します。

【建築基準法による緩和】

  • 避難経路を含まない居室

     → 避難経路として使用されない居室は制限対象外。

  • 床面積100㎡以下で区画された居室

     → 天井が3m以上ある場合、制限が緩和される場合あり。

  • 避難階・直上階にある範囲

     → 自動火災報知設備がある場合、内装制限の適用外。

  • スプリンクラーや排煙設備を設置

     → 火災拡大の危険が減るため制限が緩和される。

【消防法による緩和】

  • 天井高が6m以上

     → 煙が下層にたまるまで時間がかかり、避難時間を確保できる。

  • 天井を準不燃以上の仕上げにする

     → 火の上昇による延焼リスクが減り、内装制限の一部緩和が可能。

  • 排煙設備の設置

     → 建築基準法と同様、火災時の安全性向上により制限緩和対象となる。


5.違反した場合の罰則

消防法の内装制限に違反した場合、

  • 個人:1年以下の懲役または100万円以下の罰金

  • 法人:3,000万円以下の罰金

    が科されることがあります。

    設計・施工段階での法令確認を怠ると、営業停止や再施工が必要になるケースもあるため注意が必要です。


6.まとめ

内装制限は、火災時の被害軽減と人命保護を目的とした重要な規定です。

建築基準法では避難安全の確保を、消防法では火災防止と消火活動の支援を目的としており、どちらも建物の安全設計に欠かせません。

店舗や施設のデザインを重視する場合でも、スプリンクラーや排煙設備などの緩和条件を活用すれば、法令を守りながら空間演出を実現できます。

不明点がある場合は、必ず設計士や消防署、防災専門業者へ相談しましょう。

一覧へ戻る