消防法・建築基準法における「耐火構造」とは?

火災に強い建物をつくるために欠かせない「耐火構造」。

この言葉はよく耳にしますが、実際には建築基準法と消防法の両方で関係する重要な考え方です。ここでは、耐火構造の目的や基準、似た用語との違いについてわかりやすく解説します。


1. 耐火構造とは

耐火構造とは、火災時に建物が倒壊したり、火が建物の外に燃え広がったりしないようにするための構造のことをいいます。

壁・柱・床などの主要な構造部分が、一定時間火災の熱に耐えられるよう設計されています。

その性能は建物の規模や用途によって異なり、火災が鎮火するまでの間、最長で3時間程度倒壊しない(非損傷性)、および1時間程度火炎が外に漏れない(遮熱・遮炎性)ことが求められます。


2. 耐火構造の目的

耐火構造の最大の目的は、人命の安全を確保することです。

建物がすぐに崩れてしまうと避難も救助もできません。

耐火構造は、

  • 火災発生時に倒壊を防ぐ

  • 火災の延焼を最小限に抑える

  • 避難・消火活動の時間を確保する

    という3つの目的のもとに定められています。


3. 主な構造と材料

耐火構造の建物は、燃えにくい材料でつくられています。代表的な構造は以下の通りです。

  • RC造(鉄筋コンクリート造)

  • SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

  • S造(鉄骨造)

これらはいずれも不燃性の高い材料を使用しており、火災時でも構造がすぐには崩壊しません。

また、最近では木造でも耐火構造が認められるようになっており、耐火被覆や特殊なパネルを使用することで高い耐火性能を確保できます。


4. 耐火性能の基準

建築基準法では、耐火性能を次の3つの観点で評価しています。

性能区分

内容

時間基準の目安

非損傷性

火災の熱で建物が倒壊しない性能

最大3時間

遮熱性

火熱が反対面に伝わらない性能

約1時間

遮炎性

火炎が貫通しない性能

約1時間

この基準を満たす構造として、国土交通大臣が認定した構造方法や材料が用いられます。


5. 耐火建築物と準耐火建築物の違い

「耐火構造」とよく似た言葉に「耐火建築物」「準耐火建築物」があります。

それぞれの違いを整理すると次のようになります。

区分

定義

主な特徴

耐火建築物

主要構造部すべてが耐火構造で、延焼を防ぐ防火設備を備えた建物

最も厳しい基準。鉄筋コンクリート造などが該当

準耐火建築物

外部からの延焼や内部火災に対して倒壊しにくい建物

木造や軽量鉄骨造でも該当する場合あり

耐火構造

部材単体(壁・柱など)が火災に耐える性能を持つ構造

建物全体ではなく部材ごとの性能

防火構造

主に外部からの延焼を防ぐための外壁構造

30分程度の耐火性能を持つ

準防火構造

防火構造ほどではないが、一定の延焼防止性能をもつ構造

木造住宅などで採用されることが多い

つまり、「耐火構造」は建物の部材の性能を示し、「耐火建築物」は建物全体の性能を指すという違いがあります。


6. 延焼のおそれのある部分とは

建築基準法では、隣の建物に火が燃え移るおそれのある範囲を「延焼のおそれのある部分」と定義しています。

  • 1階では隣地境界線や道路中心線から3m以内

  • 2階以上では5m以内

この範囲にある外壁や開口部(窓・出入口など)には、防火戸や防火サッシといった防火設備の設置が必要です。


7. 防火設備の役割

防火設備には大きく分けて2種類あります。

種類

機能

性能基準

特定防火設備

火災の拡大を防ぐ

1時間以上火を遮断

延焼防止のための防火設備

隣接建物への延焼防止

約20分の防火性能

これらの設備を設けることで、建物内部の火災が外へ広がるのを防ぎます。


8. 消防法との関係

耐火構造や準耐火構造は建築基準法で定められた構造区分ですが、消防法とも深く関係しています。

例えば、防火対象物の主要構造部が耐火構造であり、内装仕上げが難燃材料である場合、設置しなければならない消火器の数を減らすことができます。

火災の危険性が低い構造ほど、消防設備の設置基準も緩和される仕組みになっているのです。


9. 建物の安全を支える耐火構造

耐火構造・準耐火構造・防火構造はいずれも、火災による人的被害や建物の損失を最小限にするために定められています。

耐火性能が高いほど避難時間が長く確保でき、消防活動もより安全に行えるため、命と財産を守るための基本的なルールといえます。


✅ まとめ

  • 耐火構造とは、火災時の倒壊や延焼を防ぐための構造。

  • 性能は「非損傷性」「遮熱性」「遮炎性」で評価され、最長3時間の耐火性能を求められる。

  • 建物全体の性能を示すのが「耐火建築物」、部材単体の性能を示すのが「耐火構造」。

  • 消防法とも関連し、耐火性能の高い建物は消防設備の基準が一部緩和されることもある。

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