消火器の設置基準とは?消防法で定められた義務とポイントを解説
目次
1.消火器設置の目的
火災の初期段階で迅速に対応し、被害を最小限に抑えるために設けられたのが「消火器の設置義務」です。
消防法では建物の用途や構造、面積などに応じて、消火器を設ける位置・数・種類が細かく定められています。
2.設置が義務付けられている建物
以下の条件に該当する建物には、消防法により消火器の設置が義務付けられています。
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消防法施行令第10条に基づき、消火器の設置が義務付けられる建物は、その用途や規模によって異なります。
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火気を使用する設備・器具を設けている建物(防火措置が講じられていない場合)
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少量危険物(指定数量の5分の1以上)を取り扱う施設
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電気設備(変圧器・配電盤など)を設けている建物(100㎡ごとに1本)
なお、一般住宅には設置義務はありませんが、万一の火災に備え、自主的な設置が推奨されています。
3.消防法改正による「小規模飲食店」への義務化
2019年10月(令和元年)に消防法が改正され、飲食店や料理店などでは延べ面積に関係なく消火器の設置が義務付けられました。
これは2016年に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災を受けたもので、火気を扱う施設では面積を問わず初期消火ができる体制が求められています。
4.消火器の設置位置と距離の基準
■ 歩行距離の基準
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普通消火器:どの場所からでも歩行距離20m以内に設置
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大型消火器:歩行距離30m以内
※移動が困難な機械や棚がある場合は、それを迂回した歩行距離で計算します。
■ 設置位置の基準
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床面から1.5m以下の位置に設置
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通路や避難経路を妨げない場所
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転倒防止のため、壁掛け・スタンドなどで固定
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「消火器設置標識」を見やすい位置に掲示
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屋外・湿気・腐食ガスのある場所では保護箱内に収納
5.能力単位と設置本数の算出方法
■ 能力単位とは
消火器の「消火力」を示す数値で、ラベルに表示されています。
例:A-3、B-7、C → A火災(普通)、B火災(油)、C火災(電気)を意味します。
■ 設置数の算出例
工場(延べ面積5,050㎡・非耐火構造)の場合:
必要能力単位 = 延べ面積 ÷ 100 = 50.5 → 切り上げで 51単位
A-3(3単位)の消火器なら 17本以上の設置が必要です。
■ 耐火構造・内装制限による緩和
建物が耐火構造または内装を不燃材で仕上げている場合、能力単位の算定面積を2倍に緩和できます。
6.他設備との組み合わせによる減少措置
以下の設備がある場合、消火器の必要能力単位を減らすことができます。
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屋内消火栓設備•スプリンクラー設備:2/3まで減少
※ただし、歩行距離の基準(20m/30m)は減少されません。
7.付加設置が必要な場所
通常の設置義務とは別に、次の用途には追加の消火器が必要です。
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対象施設 |
設置基準 |
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少量危険物(例:灯油など) |
第4類火災に適応する1単位以上 |
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指定可燃物(例:綿花など) |
指定数量の50倍につき1単位、500倍以上は大型消火器 |
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電気設備 |
面積100㎡ごとに1本 |
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多量火気使用場所(ボイラー室など) |
25㎡以下ごとに1単位 |
8.設計の手順
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建物の用途と延べ面積を確認し、必要能力単位を算出。
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各階に分配し、歩行距離20m以内を満たすよう配置。
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危険物・電気設備などの付加設置分を追加計算。
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計算結果をもとに「消防用設備等設置届出書」を作成。
9.義務違反の罰則
設置義務のある建物で消火器を設けていない場合、消防法第44条により「30万円以下の罰金または拘留」の対象となります。
また、設置後も定期点検・報告義務があり、怠ると同様に罰則が適用されることがあります。
🔎 まとめ
消火器は、火災を最小限に抑えるための「最前線の防御装置」です。
消防法に基づいた適正な設置と、定期的な点検を行うことで、火災被害のリスクを大幅に軽減できます。
特に飲食店や工場など火気を扱う施設では、法令改正内容も含めて最新の基準を常に確認することが重要です。