【熊本消防点検】スプリンクラー設備の仕組みと設置基準を徹底解説

スプリンクラーは、火災の熱を感知して自動的に放水し、初期消火を行う消防用設備です。

主に病院、ホテル、劇場、オフィスビルなど、大規模で避難に時間がかかる建物への設置が義務付けられています。

本記事では、スプリンクラーの仕組みや種類、設置基準について、消防設備の専門家が分かりやすく解説します。


スプリンクラーとは

スプリンクラー設備は、火災発生時に熱を感知して自動的に放水し、火勢を抑制する消防用設備です。

火災報知器や受信機と連動し、火災発生の早期段階で作動します。

一般的なスプリンクラーは、天井に取り付けられたヘッドが感熱部(ガラスバルブやヒューズリンク)によって閉じられています。

この感熱部が一定温度に達すると破裂し、蓋が外れて配管内の加圧水が一気に放水されます。


スプリンクラーの仕組み

スプリンクラーは、以下のような主要機器で構成されています。

  • 水源・加圧送水装置(スプリンクラーポンプ)

  • 起動装置(圧力タンク・手動起動装置)

  • 流水検知装置(アラーム弁)

  • 一斉開放弁(電動弁)

  • 配管・スプリンクラーヘッド

  • 弁類(管末試験弁等)

  • 非常電源

火災によってスプリンクラーヘッドの感熱部が作動すると、蓋が外れて水が放出されます。

その圧力変化を検知してアラーム弁が作動し、受信機に火災信号を送ると同時にポンプが自動的に起動し、散水を継続します。


スプリンクラーの種類

スプリンクラー設備は使用環境や目的に応じて、次のような方式に分かれます。

● 閉鎖型スプリンクラー設備

平常時は水の出口が閉じており、火災の熱で開くタイプです。

さらに以下の3種に分類されます。

  • 湿式スプリンクラー:配管内に常時加圧水を充満。最も一般的。

  • 乾式スプリンクラー:配管内に圧縮空気を充填。寒冷地に適用。

  • 予作動式スプリンクラー:火災感知器と連動し、感知後に配管へ水を送るタイプ。水損を防止でき、サーバー室などに使用。

● 開放型スプリンクラー設備

常にヘッドが開放されており、火災感知器または手動操作によって一斉放水します。

倉庫や劇場など、火災の拡大が早い場所に用いられます。

● 放水型スプリンクラー設備

デパートやドームなどの大空間施設に設置。

固定式(壁や天井)と可動式(放水銃タイプ)があり、遠隔操作で放水します。

可動式は毎分約4,000ℓの水を放水し、射程100mに及ぶこともあります。

● ドレンチャー設備

開放型の一種で、防火区画の形成や防火戸の代わりとして用います。

特に大開口部や舞台、危険物施設に設置されます。


スプリンクラーの作動条件

スプリンクラーが作動する主な条件は以下の3つです。

作動温度

スプリンクラーヘッドの感熱体が、設定温度(72℃・96℃・139℃)に達すると作動。

温度区分は環境に応じて選定され、誤作動防止にも役立ちます。

  • 72℃:一般的なオフィスや店舗

  • 96℃:厨房など高温環境

  • 139℃:サウナなど高温常態施設

火災報知器との連動

一部のスプリンクラーは、火災感知器(熱・煙感知器)と連動して作動します。

ただし、煙感知器と連動させる場合は誤作動防止に十分な配慮が必要です。

手動操作

非常時には、手動弁を開放して放水することも可能です。

迅速な判断と操作訓練が重要になります。


スプリンクラーの設置基準

スプリンクラーの設置は「消防法施行令第12条」により義務づけられています。

主な基準は次のとおりです。

区分

基準

11階以上の建物

原則として設置義務あり

病院・診療所・助産所

延べ面積に関係なく設置義務あり

地上1〜3階建

延べ3,000〜6,000㎡で義務(用途による)

地上4〜10階建

延べ1,000〜1,500㎡で義務(用途による)

地階または無窓階

延べ1,000㎡で義務

また、指定可燃物を大量に扱う施設(指定数量の1,000倍以上)も設置対象になります。

なお、設置基準は地域条例によっても異なるため、管轄消防署への確認が必須です。


まとめ

スプリンクラーは、火災初期の段階で自動的に消火活動を開始し、人命と財産を守る非常に重要な設備です。

その作動条件・設置基準を正しく理解し、専門業者による定期点検を欠かさないことが大切です。

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