火災時の爆発現象とは?フラッシュオーバーとバックドラフトの違いを徹底解説
火災現場では、急激に炎が広がる「フラッシュオーバー」や、爆発的な燃焼を引き起こす「バックドラフト」と呼ばれる現象が発生することがあります。
どちらも一瞬で火勢が強まり、建物内にいる人や消防活動中の隊員にも極めて危険な影響を及ぼします。
この記事では、火災時に起こる爆発的な燃焼現象の仕組みと、その違い、予防のポイントについて詳しく解説します。
目次
フラッシュオーバーとは
フラッシュオーバーとは、室内の局所的な火災が一気に部屋全体に広がる現象のことです。
酸素が十分にある状態で、火災による熱が天井付近にたまり、壁や天井・家具などの可燃物に輻射熱(ふくしゃねつ)が伝わることで、部屋中の可燃物が一斉に発火します。
つまり、最初は一部分だけ燃えていた火災が、短時間のうちに部屋全体が炎に包まれる段階へと移行するのです。
発生のメカニズム:
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可燃物から発生した可燃性ガスが熱で室内に充満する
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天井付近の温度が上昇し、ガスと可燃物が発火点に達する
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部屋全体で一斉に着火し、炎の海となる
特徴的な兆候:
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天井付近の煙が濃く、下方に降りてくる
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部屋全体が高温(約500〜600℃)に達する
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炎が天井を伝って広がる
バックドラフトとは
バックドラフトは、酸素不足の状態でくすぶっていた火災に、新鮮な空気が流入することで爆発的に燃え上がる現象です。
密閉性の高い建物内で火災が発生すると、燃焼によって酸素が消費され、炎が小さくなります。
しかし、可燃性ガスは室内に残ったままです。
この状態でドアや窓を開けて外気を取り込むと、酸素と可燃性ガスが混ざり、一気に爆発的燃焼(=バックドラフト)が起こります。
発生のメカニズム:
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酸素不足のため炎は小さくなる
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可燃性ガスが区画内に充満
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ドアや窓の開放で酸素が急激に供給
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火種を着火源に爆発的燃焼が発生
特徴的な兆候:
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ドアの隙間から煙が吸い込まれるように動く
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煙の色が黄色がかった濃い茶色
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室内から低い「ゴォ…」という音がすることも
フラッシュオーバーとバックドラフトの違い
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特徴 |
フラッシュオーバー |
バックドラフト |
|---|---|---|
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酸素量 |
十分にある |
不足している |
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現象 |
室内全体が一斉発火 |
爆発的な燃焼 |
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発生段階 |
火災が拡大する段階 |
火災が酸欠状態の段階 |
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主な原因 |
高温と輻射熱による可燃物の一斉発火 |
酸素の急激な流入によるガス爆発 |
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火の様子 |
天井付近から炎が広がる |
炎は見えないが煙の動きが不自然 |
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危険性 |
短時間で脱出困難 |
爆風・高温で致命的被害 |
現場での兆候と注意点
フラッシュオーバーもバックドラフトも、消防士でさえ命を落とすほど危険な現象です。
もし現場で以下のような兆候を見た場合は、決して不用意に扉を開けたり、近づいたりしてはいけません。
⚠️注意すべき兆候:
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煙が濃く、低い位置まで降りている
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ドアや窓の隙間から煙が吸い込まれている
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壁や天井から熱を感じる
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鈍い爆発音や空気の流れを感じる
これらは、内部で可燃性ガスが溜まっているサインです。
消防活動においては、換気操作(ベンチレーション)や熱画像カメラによる内部温度の確認が非常に重要です。
まとめ:現象を理解して防火意識を高めよう
フラッシュオーバーとバックドラフトは、いずれも「温度」「酸素」「可燃性ガス」のバランスが崩れることで発生します。
これらの現象を理解することは、火災予防や避難行動を考えるうえで非常に大切です。
火災の初期段階では、早期の通報と安全な避難が何よりも重要です。
そして、建物の構造や気密性を考慮した防火対策の実施が、被害を最小限に抑える鍵となります。