【熊本消防点検】消防機関へ通報する火災報知設備とは?仕組みと設置基準をわかりやすく解説

火災報知設備と聞くと「住宅用火災警報器」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、火災発生時に消防機関へ直接通報を行う「火災通報装置(火通)」という設備があるのをご存じでしょうか?

この装置は、パニック時でも確実に119番通報を行うための重要な消防用設備です。

今回は、この「消防機関へ通報する火災報知設備」について、仕組みや設置義務、免除条件などを詳しく解説します。

火災通報装置とは

「火災通報装置」とは、火災が発生した際に電話回線を通じて自動的に消防機関(119番)へ通報するための設備です。

手動による通報だけでなく、自動火災報知設備の感知器と連動して自動通報を行うこともできます。

通報の際には、あらかじめ登録された施設名・住所・電話番号などが自動音声で消防機関へ伝達されるため、

混乱時や避難誘導中でも迅速かつ確実な通報が可能です。

この装置は、赤い受話器が特徴的で、現場では通称「火通(かつう)」と呼ばれています。


主な機能と仕組み

火災通報装置には、以下のような機能が備わっています。

  • 🔴 手動通報:ボタン操作で通報を開始

  • 🔥 自動通報:感知器が作動すると自動で通報

  • 📞 自動音声による通報:施設情報を音声で送信

  • 🔁 呼び返し対応:消防機関からのコールバックに応答可能

  • ☎️ 電話回線の確保:他の通話を強制的に中断し、通報を優先

  • 🔋 停電対策:停電時でも一定時間通報が可能(予備電源付き)

これらの機能により、火災発生から消防への通報までの時間を大幅に短縮でき、被害の拡大防止につながります。


設置義務と免除条件

火災通報装置は、一定規模以上の建物や特定用途施設(病院・福祉施設など)に設置が義務付けられています。

設置基準は、消防法施行令第23条および関連省令により細かく規定されています。

主な設置条件は以下のとおりです:

  • 防災センターなど、常時人がいる主要な場所に設置

  • 複数の常駐場所がある場合は、主たる場所に本体を設置し、他の場所には遠隔起動装置を設ける

  • 自動火災報知設備と連携する場合は、受信機または副受信機と併設

🔸免除されるケース

消防法施行令第23条第3項により、以下の条件に該当する場合は設置が免除されます。

  • 消防機関へ常時通報できる一般電話を設置している場合(※一部例外あり)

  • 消防機関から著しく離れた場所(約10km以上)

  • 消防機関から500m以内の建物(一定用途を除く)

ただし、旅館・ホテル・病院・老人ホーム・デイサービス等は、例外として免除対象外です。

また、一般電話で代替できる場合でも、IP電話や光回線電話は逆信に対応できないため使用不可とされています。


自動火災報知設備との連携

火災通報装置の弱点は、基本的に手動で起動しなければ通報されない点です。

しかし、自動火災報知設備と連携させることで、感知器が作動した時点で自動通報が可能になります。

この連携により、火災の初期段階で消防機関に直接信号を送ることができ、通報遅れによる被害拡大を防止します。

また、火災通報装置には「作動確認ランプ」や「通話機能」なども備えられ、

現場状況を消防側とリアルタイムで共有することができます。


まとめ

消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置)は、火災発生時に迅速で確実な通報を行うための重要な設備です。

特に医療・福祉施設など、高齢者や避難困難者が多い建物では義務設置となっており、

避難誘導と通報の両立を支える心強いシステムといえます。

一般電話で代替できる場合もありますが、設置条件や例外規定があるため、

事前に消防署や有資格業者に相談し、法令に基づいた設置を行うことが大切です。

 

一覧へ戻る