防火ダンパーとは?仕組み・種類・設置基準・点検方法を徹底解説
建物には、空気を循環させるための「ダクト」が張り巡らされています。
このダクト内に設けられる「ダンパー(Damper)」は、空気の流れを制御するための装置です。
ダンパーには大きく分けて「空調用ダンパー」と「防火ダンパー」があり、中でも防火ダンパーは火災時に炎や煙の拡大を防ぐ非常に重要な設備です。
今回はこの防火ダンパーについて、仕組み・種類・設置基準・点検方法までわかりやすく解説します。
目次
■ ダンパーとは?基本構造と役割
ダンパーとは、ダクト内に取り付けられた羽根状または板状の扉で、空気の流れを開閉・調整する装置です。
主な用途は次の2種類に分けられます。
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空調用ダンパー:室内の温度・湿度を最適に保つために空気の流れを調整するもの。
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防火ダンパー:火災発生時に炎や煙の通過を防ぎ、建物の延焼や煙拡散を防ぐもの。
特に防火ダンパーは、火災時に自動で閉鎖し、火や煙の拡大を防ぐ命綱ともいえる存在です。
■ 防火ダンパーの構造と作動原理
防火ダンパーは、ダクトが防火区画を貫通する箇所などに設けられ、火災発生時に自動的に閉鎖します。
構造としては、
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ダクト内の所定位置に温度ヒューズが取り付けられており、
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ダクト内の温度が設定温度(72℃または120℃など)を超えるとヒューズが溶け、
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羽根(ダンパー)がバネや重力によって閉まり、炎や煙を遮断する仕組みです。
また、排煙設備ではさらに高温(280℃)で作動するタイプもあります。
■ 防火ダンパーの主な種類
防火ダンパーは、作動要因(煙/熱)により大きく2つに分類されます。
🔹1. 煙により閉鎖するタイプ
火災で煙が発生した際、自動的に閉じるタイプ。
1️⃣ SFD(煙感知器連動防火ダンパー)
煙感知器の信号で自動的に閉鎖するタイプ。
防火区画の要件として、建築基準法施行令第112条に基づき設置されます。
2️⃣ PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)
ガス系消火設備の放射圧力で閉鎖するダンパー。
ガス放射時に給気を遮断し、防護区画を密閉する役割を担います。
🔹2. 温度上昇により閉鎖するタイプ
火災時に温度が急上昇すると閉じるタイプ。
1️⃣ FD(防火ダンパー)
最も一般的なタイプ。
72℃または120℃のヒューズで閉鎖し、炎の延焼を防止します。
2️⃣ HFD(排煙用防火ダンパー)
排煙ダクト用の高温対応タイプ。
通常時は煙を排出しますが、280℃に達すると閉鎖し、火炎の逆流を防ぎます。
■ 防火ダンパーの構造タイプ
防火ダンパーには、構造により以下のようなタイプがあります。
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バタフライ型:両開きの羽根でダクトを閉鎖する方式。
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レバー型:バネの力で回転して閉鎖する方式。
どちらも通常時はヒューズがストッパーとして働き、火災時にヒューズが溶けると自動で閉鎖します。
■ 防火ダンパーの設置基準(建築基準法)
防火ダンパーの設置は、建築基準法施行令第112条〔防火区画〕および関連告示によって定められています。
設置が義務付けられる主なケースは以下の通りです。
✅ 設置義務がある3つのパターン
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防火区画・竪穴区画・異種用途区画を貫通するダクト
→ 火炎や煙の移動を防ぐために設置。
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厨房設備の排気ダクト
→ 油脂を含む蒸気により高温となるため、120℃ヒューズ付きダンパーを設置。
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ガス系消火設備の防護区画内の開口部
→ 消火剤放射前に自動閉鎖するため、ガス圧式ダンパーを設ける。
また、閉鎖後は「防火上支障のない遮煙性能を有すること」と定められています。
■ 防火ダンパーの点検・維持管理
防火ダンパーは建築基準法上の特定防火設備に該当し、
以下の維持管理・報告義務が生じます。
点検区分
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日本防排煙工業会が推奨する自主点検
→ 年1回程度、作動や汚れを確認。
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消防用設備点検(※ガス系消火設備がある建物)
→ 消火ガス圧式ダンパーなどが対象。
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建築設備定期検査
→ 特定建築物では6ヶ月〜1年に1回の法定検査が義務。
点検のポイント
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温度ヒューズ部にホコリや塵がたまっていないか確認。
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作動確認(手動または模擬試験)を実施。
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ヒューズは約5〜7年を目安に交換が推奨。
埃や油脂でダンパーが固着すると、火災時に作動しない危険性があります。
点検不良による火災拡大事故も報告されており、定期点検は命を守る行為です。
■ まとめ
防火ダンパーは、火災時に炎や煙の拡大を防ぐ「建物の命綱」です。
設置位置・種類・温度ヒューズ設定など、正しい知識と点検が不可欠です。
見えない場所にある設備だからこそ、定期点検と清掃を怠らないことが安全につながります。
🔧「普段見えない場所こそ、命を守る最前線」
防火ダンパーの点検・保守は、私たち消防設備士・点検業者の使命です。