発信機はどんな時に押す?押したらどうなる?消防設備士がわかりやすく解説

はじめに

「火災報知器のボタンは押すとどうなるの?」「間違って押したらどうすればいい?」

こういった疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

建物内でよく見かける赤い丸いボタン——これは**自動火災報知設備の「発信機」**と呼ばれるもので、火災を発見した人が手動で警報を出すための重要な設備です。

この記事では、

「発信機はどんな時に使うのか?」

「押すと何が起きるのか?」

「間違って押した時の復旧方法」

を、初心者にもわかりやすくまとめて解説します。


発信機とは?どんなときに押すもの?

発信機とは、自動火災報知設備の構成機器のひとつで、

壁に埋め込まれた赤色の丸い押しボタンのことです。

中央の透明カバーには「強く押す」と書かれており、火災を見つけた人が手動で知らせるための装置です。

■ 発信機を押すべき状況

  • 火災を目視で確認したとき

     炎・煙・焦げ臭さなど、火災と判断できる異常がある場合。

  • 感知器(煙感知器・熱感知器)が作動するまえ

     火災報知設備の感知器は熱や煙を自動で感知しますが、出火して感知するまで少し時間がかかります。

     その場合は人が発信機で通報する必要があります。


発信機を押すとどうなるの?

発信機はただのボタンではなく、建物全体の防災設備と連動しています。

押すと次のような流れで作動します。

発信機を押した後の流れ(代表例)

  1. 発信機が作動し、信号を送る

  2. 管理室などの「受信機」が火災信号を受信

  3. 非常ベル・サイレン・火災放送が鳴動

  4. 火災通報装置から消防署へ通報(連動起動接続時にかぎる)

  5. 屋内消火栓設備のポンプが起動する


「発信機を押す=火災確定扱い」になる理由(放送設備)

自動で感知するセンサー(煙感知器・熱感知器)は非火災報の可能性があるため、

「火災報知器が作動しました」→設定時間経過後「 火事です火事です」

という二段階の動作があります。

一方、発信機は人が押す=火災を確認したと判断されるため、いきなり火災確定の動作へ。

 


間違って押したときの復旧方法

発信機を戻すには 「発信機の復旧」+「受信機の復旧」 の2つが必要です。


発信機側の復旧

多くの発信機には、内部に次のような仕組みがあります。

  • ボタン付近のカバーを開ける

  • 内部のツメ(切替スイッチ)を元に戻す

  • 機種によっては「復旧ボタン」を押すだけのタイプもある

※作業自体は難しくありませんが、通常は建物の管理者が行います。


受信機側の復旧

管理人室・防災センターにある受信機で、

  • 「復旧」

  • 「リセット」

  • 「解除」

などのボタンを押すと警報が止まります。

⚠ 注意

発信機を復旧していない状態で受信機だけリセットしても、警報が止まらないことがあります。

必ず「発信機 → 受信機」の順で復旧してください。


発信機を押すと罪になる?

■ 正当な理由があれば罪にならない

火災と誤認した場合でも、

「火災かもしれない」と判断した上で押した場合は問題ありません。

■ いたずら・悪意がある場合は犯罪

  • 威力業務妨害罪(3年以下の懲役 or 50万円以下の罰金)

消防法違反(みだりに使用・改造・使用妨害)

 


発信機の設置基準(消防法)

  • 各階から発信機までの距離…50m以内

  • 設置場所…廊下・階段・出入口付近など目に付きやすい場所

  • 色…必ず赤色(変更不可)

  • 高さ…床から0.8〜1.5m

  • 近くに表示灯(赤いランプ)を設置する


まとめ

  • 発信機は火災を見つけた人が押す、手動の火災報知ボタン

  • 押すと受信機へ信号が送られ、ベル・サイレン・火災放送が作動

  • 間違って押した場合は「発信機 → 受信機」の順で復旧

  • 正当な理由なら罪にならないが、いたずらは業務妨害罪

  • 発信機は消防法で厳密に設置基準が定められている

非常時に確実に作動させるため、定期的な消防設備点検が必要です。

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