【熊本建築設備点検】排煙口とは?種類・設置基準・点検ポイントまで徹底解説
そもそも排煙口とは?
排煙口とは、火災時に発生する大量の煙を屋外へ排出するための開口部で、排煙設備の中核を担う装置です。
煙は火炎よりも早く広がり、視界の悪化や一酸化炭素中毒によって避難を困難にさせるため、建物の安全対策において非常に重要な役割を持っています。
排煙口は 建築基準法と消防法の両方で設置が義務付けられるケースがあり、それぞれ目的が異なります。
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建築基準法の目的:在館者が安全に避難できるための視界・空間の確保
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消防法の目的:消防隊が安全に消火活動を行える環境の確保
火災時の煙対策を二重の法令で守っているという点が、排煙設備の重要性を物語っています。
排煙設備の種類
排煙設備には大きく分けて 「自然排煙」 と 「機械排煙」 の2種類があります。
目次
■ 自然排煙
煙が上昇する性質を利用し、天井付近の窓(排煙窓)を開放して煙を排出する方式。
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建物内の「防煙区画」ごとに設置される
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設置された排煙口は 床面積の1/50以上の大きさが必要
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手動解放装置や自動開放装置などの操作部が必要
自然の力を利用するため機械が少なく、比較的コストが抑えられるのが特徴です。
■ 機械排煙
排煙機(ファン)が煙を吸い上げ、ダクトを通して屋外に強制排出する方式。
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排煙機は1分あたり120m³以上の排煙能力が必要
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非常用電源が必須
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31m超の建物では中央管理室から制御可能であることが必要
窓が作れない構造の建物や地下などで採用されることが多い方式です。
排煙口が不要となるケース(排煙告示の免除)
実は、すべての建物に排煙口が必要なわけではなく、一定条件を満たすと「排煙設備の設置が免除」されます。
その条件は建設省告示1436号(通称:排煙告示)に明記されています。
■ 主な免除例
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100㎡以下の病院・ホテル・マンション等で準耐火構造の区画がある場合
(共同住宅は200㎡以内)
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学校や運動施設
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階段・エレベーター・乗降ロビー
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工場内倉庫で不燃物のみを保管する場合(主要構造部も不燃材料)
ただし、「建物全体が免除」されるわけではなく、
多くは建物の一部分のみが免除対象となります。
また、免除されるためには該当部分が 正しい方法で区画されていることが必須 です。
手動解放装置とは?
手動解放装置とは、操作することで排煙口を開放したり、排煙機を起動させたりする装置のことです。
■ 設置基準
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手で操作する部分は 床上80cm〜150cm
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天井吊り下げ型は 床上約1.8m
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使用方法を「見やすい方法」で表示すること
範囲外の高さに設置されて違法と判断された事例もあるため、設置時の確認が重要です。
■ 主な種類
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電気式(押しボタン)
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操作が簡単
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景観を損ないにくい
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ワイヤー式(レバー式)
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大きく目につきやすい
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ただし審査でボタン式への変更を指導されるケースあり
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排煙口でよくある故障と点検ポイント
排煙口は普段動く装置ではないため、いざというときに不具合が発覚することもあります。
■ よくある不具合
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排煙窓が固着して開かない
→ ゴムの劣化・サビ・歪みによるもの
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ワイヤー切れ・錆び
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電気式解放装置の電源不良
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排煙機が作動しない(非常電源含む)
日本は地震が多く、窓枠の歪みが蓄積して動作不良を起こすことも少なくありません。
■ 点検で確認する主な項目
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手動解放装置の作動
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排煙窓の開放角度
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ワイヤーの張り具合
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排煙機(機械排煙)の起動
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自動解放装置の連動確認
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非常電源の状態
「普段使わない=劣化している可能性に気付きにくい」
だからこそ、定期点検が欠かせない設備です。
まとめ
排煙口は、火災時に最も危険となる「煙」から人命を守る非常に重要な設備です。
建物の構造や用途によって自然排煙・機械排煙を選ぶ必要があり、免除条件も複雑に定められています。
特に排煙口や手動解放装置は、
普段動かない設備だからこそ不具合が起きやすい
という特徴があります。
安全のためにも、法令点検で確実に作動確認を行い、不具合があれば早期に修繕することが重要です。