【建築基準法12条点検とは?】建物の安全を守るための定期的な“健康診断”|熊本建築設備点検

建物は時間とともに必ず劣化し、使用環境や災害によって徐々に弱っていきます。

そんな建物の状態を定期的にチェックし、安全を確保するために義務化されているのが 「建築基準法第12条(12条点検)」 です。

不特定多数の人が利用する建物では、ちょっとした不具合が大きな事故につながりかねません。

そのため、所有者・管理者は定期的に専門資格者による点検を行い、結果を行政へ報告する必要があります。

怠った場合は罰則の対象となる、非常に重要な点検です。


■ 12条点検の目的

12条点検は一言でいえば、建物の「今の状態」を専門的に診断し、

利用者の安全を守るための制度です。

  • 経年劣化による危険を防止

  • 火災・設備故障などのリスクを低減

  • 建物の価値維持・機能保持

  • 法令違反や事故の未然防止

建物の“健康診断”のような役割を持っています。


■ 点検対象となる建物と設備

12条点検の対象は、建築基準法の改正により大幅に拡大しました。

現在は、以下の 4つのカテゴリ が定期報告の対象です。

建築物(敷地・構造など)

  • 病院、学校、ホテル、旅館、商業施設

  • 共同住宅、寄宿舎

  • 劇場、図書館、スポーツ施設 など

※自治体ごとに指定基準が異なるため、管理建物が対象かどうかは個別確認が必要。


防火設備

感知器と連動して作動する“動く防火区画”が対象です。

  • 防火扉

  • 防火シャッター

  • 耐火クロススクリーン

  • ドレンチャー(水幕設備)


建築設備

建物の“生命線”ともいえる主要設備。

  • 換気設備

  • 排煙設備(機械式)

  • 非常用照明装置

  • 給水・排水設備(受水槽・高架水槽など)


昇降機等

  • エレベーター

  • エスカレーター

  • 小荷物専用昇降機

※保守契約によっては法定点検が含まれていない場合もあるため要確認。


■ 12条点検の実施者

12条点検は誰でも実施できるわけではありません。

法律で定められた有資格者のみが実施できます。

点検を行える資格

  • 一級建築士

  • 二級建築士

  • 国交省が認定した資格者

     (特定建築物調査員、防火設備検査員、建築設備検査員、昇降機等検査員 など)

資格分野以外の項目は点検できません。

そのため、建物規模や設備内容によっては複数の資格者が必要になるケースもあります。


■ 点検項目の概要

 建築物・敷地(6分類)

  • 地盤・敷地の状況

  • 外壁や屋根の劣化、亀裂

  • 内部(壁・床・天井)の破損

  • 避難経路や出入口の障害物

  • 特殊部位(煙突など)

  • 排水・通路状況

細かい部分まで確認され、外壁は10年ごとに全面打診が必要な場合も。


 防火設備

  • 動作試験(確実に作動するか)

  • 劣化・損傷の有無

  • 周囲に障害物がないか

  • ドレンチャーの貯水槽や弁類の機能


 建築設備

  • 給排水設備の漏水、腐食、動作

  • 換気設備の稼働状況

  • 非常照明の電池・点灯確認

  • 排煙機・防煙壁の動作確認


 昇降機

  • カゴ・ドアの動作

  • 操作パネルや制御機器

  • モーター・制御盤の状態


■ 点検の周期(初回だけ時期が違うので要注意)

点検項目

初回点検

2回目以降

建築物(敷地・構造)

完成後6年以内

3年以内ごと

防火設備

完成後2年以内

1年以内ごと

建築設備

完成後2年以内

1年以内ごと

昇降機

完成後2年以内

1年以内ごと

■ 点検を怠った場合の罰則

12条点検は「努力義務」ではなく 法的義務 です。

  • 報告を怠る → 100万円以下の罰金

  • 虚偽報告 → 罰則対象

  • 行政指導・是正命令の可能性あり

通知が届かなくても義務は免除されません。

管理者自身がスケジュールを把握し、確実に実施する必要があります。


■ まとめ:12条点検は“建物の安全と価値を守るための最重要点検”

12条点検は表面的なチェックではなく、

建物の安全性を根本から確認する義務と責任 です。

  • 利用者の安全確保

  • 法令遵守

  • 建物の資産価値維持

  • 事故・災害の防止

これらを実現するために必要不可欠な制度といえます。

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