身近なリチウムイオン電池の火災リスクと安全な使い方・捨て方【熊本防災】

■ はじめに

スマートフォン、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチ、携帯用扇風機…。

私たちが日常的に身につけたり持ち歩いたりする多くの機器には、リチウムイオン電池が使われています。

便利な一方で、近年は列車内でのモバイルバッテリー発火事故や、スマートフォンの発火など、電池に起因する事故が増えています。

さらに、使用後に一般ごみに混ぜて廃棄したことで、ごみ収集車や処理施設で火災が起こるケースも少なくありません。

今回は、特に身近な小型電気機器に焦点をあて、

なぜ発火するのか・どんな事故が起きているのか・安全に使うためのポイント・正しい廃棄方法

をまとめて解説します。


■ リチウムイオン電池の事故はなぜ起きる?

リチウムイオン電池は、

  • 衝撃に弱い

  • 高温に弱い

  • 内部ショート(短絡)が起きると急激に加熱する

    という特性があります。

内部で異常反応が進むと「熱暴走」と呼ばれる状態になり、

発熱 → 発煙 → 発火 → 小爆発

に進行することがあります。

特に以下の場面で事故が多く発生しています。

  • 充電中

  • バッグの中で圧迫されたとき

  • 高温の車内に放置されたとき

  • 落下・衝撃を受けたあと

  • 劣化ケーブルを使用したとき


■ 実際に起きている主な事故事例

● ワイヤレスイヤホン

  • 充電ケースが発熱し、かばんの中で発火。周囲の荷物が焦げた。

  • 使用中のイヤホンが破裂し、耳元や首をやけどした。

● スマートウォッチ

  • ネットで購入した格安品を充電中に溶解。焦げ臭い匂いが発生。

  • 睡眠時に装着していたところ深夜に突然発火し、腕にやけどを負った。

● 携帯用扇風機

  • USB経由で使用中に本体が発火し、卓上に火柱が上がった。

  • バッグの中に入れていた充電済みの扇風機が突然発煙・発火した。

小型製品でも、条件が重なると大きな火災へと発展することがあります。


■ 【使用時】リチウムイオン電池の安全な使い方

衝撃・圧力を避ける

  • 落とす、投げる、踏むなどの強い衝撃は厳禁

  • ズボンのポケットに入れたまま座らない

高温環境に置かない

  • 夏場の車内

  • 布団・まくら・カーペットの下

  • 暖房器具の近く

    → これらは電池内部の温度が急上昇しやすい環境です。

充電は必ず「安全な場所」で

  • 可燃物の上で充電しない(布団・紙類・木製家具など)

  • できるだけ起きているときに行う

  • 寝る前の「つけっぱなし充電」は避ける

ケーブル・充電器は信頼できるものを

  • 純正品または安全規格(PSE/CE/UL等)品

  • 破れたケーブルはすぐ交換

    → 被膜破れはショートの主要原因

異常を感じたら即使用を中止

  • 発熱

  • 膨張

  • 異臭

  • 変形

安全を最優先に、使用停止 → メーカー・販売店へ相談。

発火した場合の初期対応

  • まず身の安全を確保

  • 可能であれば大量の水で冷却(熱暴走を抑える効果)

  • 金属のバケツや鍋に入れて隔離

  • 危険を感じたらすぐ119番


■ 【廃棄時】絶対に他のごみと混ぜない!

近年、ごみ収集車や処理施設での火災の多くは、リチウムイオン電池の混入が原因です。

小型のイヤホン用電池1個でも、大きな火災につながります。

廃棄時のポイント:

リチウムイオン電池かどうか確認

パッケージ・本体裏の表示

「Li-ion」「リチウムイオン電池」などの表記が目印。

リサイクル回収を利用

  • 家電量販店の回収BOX

  • 各自治体のリサイクル窓口

  • 小型充電式電池のリサイクル協力店

電池を使い切ってから捨てる

完全放電は事故リスクを減らせます。

端子部はテープで絶縁

ショート(短絡)を防止するため、金属端子にテープを貼付。


■ まとめ

リチウムイオン電池は便利な反面、扱いを誤ると重大事故につながる危険性があります。

特に

  • 充電中の管理

  • 高温環境の回避

  • 信頼できる製品の使用

  • 正しい廃棄

    これらを徹底することで、発火リスクは大きく軽減できます。

身近な製品だからこそ、正しい知識で安全に利用しましょう。

一覧へ戻る