飲食店における消火器の設置基準・点検・報告義務をわかりやすく解説|熊本消火器設置

飲食店は火を扱う機会が多く、建物用途の中でも火災リスクが高い業種です。

そのため、消防法では消火器の設置や定期的な点検・報告が厳しく定められています。

特に2019年10月の消防法施行令改正により、これまで消火器の設置義務がなかった小規模な飲食店にも、原則として消火器設置が求められるようになりました。

本記事では、

  • 飲食店の消火器設置基準

  • 設置が不要となる例外条件

  • 適切な消火器の種類

  • 点検・消防署への報告義務

について、専門業者の視点からわかりやすく解説します。


飲食店の消火器設置基準(2019年10月改正)

改正前と改正後の違い

以前は、延べ面積150㎡以下の飲食店については、消火器の設置義務がないケースもありました。

しかし、2019年10月1日以降は基準が大きく変わり、

火を使用する設備・器具を設置している飲食店は、延べ床面積に関係なく消火器の設置が原則必要

となっています。

小規模な店舗、テナントの一角、居酒屋・カフェ・ラーメン店なども対象になる点には注意が必要です。


消火器設置が不要となる例外ケース

すべての飲食店で必ず消火器が必要というわけではなく、以下のような例外措置も認められています。

火を使用しない飲食店

  • IHクッキングヒーターのみ

  • 電子レンジのみで調理している店舗

このように電気のみを熱源とする場合は、「火を使用する設備」に該当しません。

防火上有効な措置が講じられている場合

火を使用する設備があっても、次のような防火安全装置が設置されていれば、消火器設置義務が免除されることがあります。

  • 調理油過熱防止装置

  • 圧力感知安全装置(立ち消え安全機能など)

  • 自動消火装置

ただし、これらの設備をすべて満たしている飲食店は多くありません。

そのため、実務上は「ほぼすべての飲食店で消火器が必要」と考えておくのが現実的です。


消火器の設置位置と本数の考え方

設置距離の基準

  • 火元となり得る場所から歩行距離20m以内

  • ガスコンロ等がある階ごとに設置

1本でカバーできない場合は、複数本の設置が必要です。

設置場所の注意点

  • 避難・通行の妨げにならない

  • すぐに持ち出せる場所

  • 直置きせず、壁掛け・設置台・格納箱を使用

また、消火器の使用温度範囲を超える場所、高温多湿、直射日光、腐食性ガスが発生する場所は避け、防護措置を行いましょう。


飲食店に設置する消火器の種類とサイズ

店舗面積ごとの目安

店舗の延べ面積

消火器の種類

100㎡未満

粉末消火器 または 強化液消火器(3型以上)

100㎡以上

粉末消火器 または 強化液消火器(6型以上)

※ 住宅用消火器は使用不可です。


飲食店におすすめの消火器

飲食店、とくに厨房火災(油火災)に強い消火器は以下の2種類です。

機械泡消火器

油の表面を泡で覆い、酸素を遮断して消火するため、油火災に非常に有効です。

強化液消火器

冷却効果と窒息効果を併せ持ち、油の飛散を抑えながら消火できます。

粉末消火器も使用できますが、油に勢いよく噴射すると油が飛び散るリスクがあるため、飲食店では上記2種類がより適しています。


消火器の点検義務と消防署への報告

点検義務

  • 6か月に1回以上

報告義務

飲食店は「特定防火対象物」に該当するため、

  • 1年に1回

  • 消防設備点検結果報告書を

  • 所轄消防署へ提出

が必要です。

自己点検も可能ですが、記載ミスや不備により是正指導を受けるケースも多く、注意が必要です。


雑居ビルの共用部に消火器がある場合、飲食店テナント内の設置は必要?

雑居ビルやテナントビルでは、共用廊下や階段などにすでに消火器が設置されているケースが多くあります。

そのため、

「共用部に消火器があるなら、飲食店の店内には設置しなくてもよいのでは?」

という質問をよく受けます。

結論:原則としてテナント内にも消火器が必要です

共用部に消火器が設置されていても、飲食店テナント内の消火器設置義務が自動的になくなるわけではありません。

消防法では、消火器は

「火災が発生するおそれのある場所」から、速やかに使用できる位置

に設置されていることが求められています。

飲食店の場合、出火リスクが最も高いのは**厨房(火気使用場所)**です。

共用廊下の消火器は、

  • 扉を開けて外に出る必要がある

  • 初期消火の動作が遅れる

  • 実際の火元から距離・動線が確保できない

といった理由から、厨房火災に対する初期消火設備としては不十分と判断されるケースがほとんどです。


消防署が見るポイント

現地確認では、次のような点がチェックされます。

  • 厨房から直接、すぐに消火器を持ち出せるか

  • 歩行距離20m以内か

  • 扉・防火戸・段差などの障害がないか

  • 共用部の消火器が、実際に初期消火に使える動線か

これらを総合的に判断した結果、

「テナント内に設置してください」

と指導されるケースがあります。


共用部で足りるケースもある?

以下の条件をすべて満たす場合に限り、共用部の消火器で足りると判断される可能性もあります。

  • テナント入口が常時開放されている

  • 厨房から共用部の消火器まで明確に20m以内

  • 扉・施錠・防火戸などがない

  • 所轄消防署が現地確認のうえ了承している

ただし、このようなケースは限定的で、事前に消防署へ相談・確認することが必須です。


まとめ|飲食店の消火器は「設置・点検・報告」までが義務

飲食店における消火器は、

置いて終わりではなく、維持管理と報告までが法令上の義務です。

  • 2019年改正で小規模店舗も原則対象

  • 油火災に適した消火器選定が重要

  • 点検・報告を怠ると行政指導の対象に

安全な店舗運営のためにも、専門業者による定期点検・報告代行の活用をおすすめします。

 

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