火災には種類がある?A火災・B火災・C火災と火災の進行を正しく理解する【熊本防災】
「火災」と一言でいっても、その性質や消火方法はすべて同じではありません。
燃えている物質の種類や発生場所によって、適切な初期対応や消火方法は大きく異なります。
誤った判断は、消火できたはずの火災を拡大させたり、人命に関わる重大事故につながることもあります。
本記事では、消防の現場や法令でも用いられている
火災の区分(A火災・B火災・C火災) と、
火災がどのように拡大していくのか(初期火災からフラッシュオーバーまで) を、
分かりやすく解説します。
目次
火災とは何か
火災とは、単に「物が燃える現象」ではありません。
燃焼によって発生した熱や炎が制御できない状態となり、人の生命・身体・財産に被害を及ぼすおそれがある状態を指します。
特に注意すべきなのは、
燃焼が進むにつれて温度・煙・有毒ガスが急激に増加する点です。
初期段階では小さな火でも、短時間で人が近づけない状態に変化します。
火災の区分とは?(A・B・C火災)
消防の分野では、燃えている物質の性質によって火災を大きく3つに分類します。
これは「どの消火方法が有効か」「水を使ってよいか」を判断するための重要な考え方です。
A火災(普通火災)
主な対象
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木材
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紙
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布
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家具類 など
住宅や事務所で最も多く発生する火災が、このA火災です。
これらは燃焼時に炭化しながら燃える性質を持つため、水による消火が有効です。
初期段階であれば、消火器や屋内消火栓によって鎮火できる可能性が高く、
「初期消火が最も重要な火災」といえます。
B火災(油火災)
主な対象
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石油類
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ガソリン
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動植物油
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半固体油脂 など
飲食店の厨房や工場などで多いのがB火災です。
油火災の最大の特徴は、水をかけると火が広がる危険性がある点です。
水は油より重いため、油の下に沈み、
瞬間的に蒸発して油を飛散させ、火勢を拡大させてしまいます。
このため、水による消火は不適切または極めて困難とされています。
C火災(電気火災)
主な対象
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変圧器
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配電盤
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分電盤
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その他電気設備
C火災は、電気設備が通電した状態で発生する火災です。
最大の危険は、水をかけることで感電するおそれがあることです。
電源を遮断できない状態での放水は、
消火者自身の命を危険にさらす行為となります。
電気火災では、電源遮断と適切な消火設備の使用が不可欠です。
火災の進行と危険性
火災は、時間の経過とともに段階的に拡大していきます。
初期火災(ぼや)
出火直後の段階で、炎や煙が限定的な状態です。
この段階であれば、消火器による消火が可能な場合が多いとされています。
しかし、見た目が小さくても、
すでに室内では温度上昇や煙の滞留が始まっていることがあります。
火災拡大とフラッシュオーバー
燃焼が進むと、天井付近に高温の煙や可燃性ガスがたまり、
ある瞬間に室内全体が一気に燃え上がる現象が起こります。
これをフラッシュオーバーといいます。
フラッシュオーバーが発生すると、
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室内温度は一気に数百度以上に上昇
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人が生存できる環境ではなくなる
-
消防隊でなければ消火が困難
という状態になります。
一般的に、
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可燃性内装材の部屋では 約3~4分
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難燃材料でも 約5~8分
でフラッシュオーバーに至るとされています。
「少し様子を見よう」という判断が、取り返しのつかない結果を招くこともあります。
正しい知識が命を守る
火災時に最も重要なのは、
「何が燃えているのか」「水を使ってよいのか」を瞬時に判断することです。
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A火災:水が有効
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B火災:水は危険
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C火災:感電の危険あり
この基本を知っているだけでも、
被害の拡大を防ぎ、人命を守る可能性は大きく高まります。
消防設備点検の重要性
火災は、いつ・どこで発生するか予測できません。
だからこそ、日頃の消防設備点検と維持管理が極めて重要です。
消火器、火災報知設備、非常放送設備などが
「いざという時に確実に作動する状態」であるかどうかが、
被害を最小限に抑えられるかを左右します。
まとめ
火災には明確な区分があり、
その性質を理解することが安全対策の第一歩です。
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火災の種類によって消火方法は異なる
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初期火災の判断が生死を分ける
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フラッシュオーバーは短時間で発生する
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日常の点検が最大の防災対策
正しい知識と備えで、
「万が一」を「最小限」に抑えることができます。