【熊本消防設備】差動式熱感知器とは何か ― スポット型と分布型の違いを原理から理解する
目次
熱感知器の中でも「差動式」が持つ役割
自動火災報知設備に用いられる熱感知器は、火災による温度変化を捉えて作動する感知器です。その中でも差動式熱感知器は、「温度そのもの」ではなく、温度の上昇スピードに着目して火災を検知する点に大きな特徴があります。
通常の室内では、暖房や日射の影響などにより、ゆっくりと温度が変化します。しかし火災が発生した場合、室温は短時間で急激に上昇します。差動式熱感知器は、この「異常な温度上昇」を捉えることで、火災を判断する仕組みとなっています。
差動式スポット型熱感知器とは
差動式スポット型熱感知器は、一つの感知器で一地点の温度変化を監視するタイプの熱感知器です。
スポット型と呼ばれるのは、感知範囲が限定されており、局所的な熱の影響によって作動するためです。
この感知器は、内部に感熱室・ダイアフラム・リーク穴などを備えています。通常時は、感熱室内の空気が温度変化によって膨張しても、リーク穴から徐々に逃げるため、ダイアフラムは変位しません。しかし火災時のように温度が急激に上昇すると、空気が逃げ切れず、ダイアフラムが押し上げられて接点が閉じ、火災信号として受信機へ送られます。
この構造により、暖房などの緩やかな温度変化では作動しにくく、火災特有の急激な温度上昇に対して反応する仕組みとなっています。
感度による「1種」と「2種」の違い
差動式スポット型熱感知器には、感度の違いによって1種と2種が設定されています。
1種は比較的低い温度差・低い上昇速度で作動し、感度が高いのが特徴です。一方、2種は1種よりも作動条件が厳しく、感度はやや低くなります。
この違いは、設置場所の環境条件を考慮して選定されます。温度変動が少ない場所では感度の高い1種が有効ですが、日常的に温度変化が大きい場所では、非火災報を防ぐために2種を選ぶといった判断が必要になります。
差動式スポット型の設置上の注意点
差動式スポット型熱感知器には、設置に関する明確な制限があります。
例えば、天井高さが8mを超える場所には設置できないことや、感知器の下端は取付面の下方0.3m以内に設ける必要があることなどが定められています。
また、空調設備や換気設備の吹出口付近では、気流の影響によって温度変化が正しく伝わらない場合があるため、吹出口から1.5m以上離して設置するといった配慮も欠かせません。
これらの基準は、感知器の性能を十分に発揮させるための重要な条件です。
差動式分布型熱感知器の考え方
差動式分布型熱感知器は、広い範囲の熱の影響を積み重ねて検知するタイプの感知器です。
スポット型が「一点の異常」を捉えるのに対し、分布型は「空間全体の異常な温度上昇」を検知する点に大きな違いがあります。
分布型には、空気管式・熱電対式・熱半導体式といった方式があり、それぞれ異なる原理で温度上昇を火災信号に変換します。天井に張り巡らされた感知部や、複数の検知点からの情報をまとめることで、広範囲の火災を検知できる構造となっています。
分布型が適している場所とは
差動式分布型熱感知器は、天井が高い空間や、局所的な熱が発生しにくい場所などで効果を発揮します。
スポット型では検知しづらい場合でも、分布型であれば熱の広がりを捉えることができるため、用途に応じた使い分けが重要です。
一方で、構造が複雑で施工や点検に専門性が求められるため、設計段階での十分な検討が不可欠となります。
差動式熱感知器は「原理の理解」が選定を左右する
差動式熱感知器は、単に種類を覚えるだけでは、適切な選定や設置はできません。
スポット型と分布型の違い、作動原理、設置環境との相性を理解することで、初めて安全性と信頼性の高い自動火災報知設備が構築されます。