【熊本消防設備】避難器具とは何か?種類・設置基準・使い方などを解説
目次
火災時、「階段が使えない」という現実
建物で火災が発生した場合、多くの人は階段から避難できると考えています。
しかし実際の火災では、煙が充満し、階段が使用不能になるケースが珍しくありません。
煙で視界がなくなる。心理的パニックで移動できない。階段までたどり着けない。階段室が煙で満たされる。こうした状況になると、通常の避難経路は機能しなくなります。
そのときに命を守るために設置されているのが「避難器具」です。
避難器具は、通常の避難が不可能になった場合の最後の脱出手段であり、あくまで補助手段ですが、極めて重要な役割を持っています。
避難器具は法令上8種類に分類される
法令上、避難器具は次の8種類に分類されています。
避難ロープ
すべり棒
すべり台
避難はしご
避難タラップ
救助袋
緩降機
避難橋
この中でも、実際の建物で多く設置されるのは「救助袋」「緩降機」「避難はしご」です。
救助袋とは何か(垂直式と斜降式)
救助袋は、窓から地上へ袋状の筒を垂らし、その内部を滑り降りる避難器具です。
垂直式救助袋はほぼ真下に降下する構造で、内部直径は50cm以上必要とされ、1人ずつしか使用できません。また、壁から30cm以上離す必要があります。
斜降式救助袋は約45度の角度で設置され、連続して降下することが可能ですが、広い設置スペースが必要になります。
救助袋は見た目の安心感はありますが、設置条件や周囲の空間確保、取扱いの理解が極めて重要で、誤った環境では危険にもなり得る器具です。
緩降機とは何か
緩降機は、井戸のつるべと同じ原理を応用し、自重と調速器によってゆっくり降下する避難器具です。
調速器によって一定速度が保たれ、ロープとベルトで身体を保持しながら外壁に沿って降下します。1人ずつ交互に使用する仕組みになっており、外壁から30cm以上の空間が必要とされます。
実務では非常に多く見かける避難器具ですが、使い方を正しく理解している人は多くありません。
リールを先に投下しないと事故につながることや、ベルトの装着位置を誤ると身体が抜けてしまう危険があることなど、実は訓練を前提とした器具でもあります。
避難はしごと避難タラップの違い
避難はしごには固定式、折りたたみ式、つり下げ式、立てかけ式など複数の種類があります。固定式は各階で位置をずらす千鳥配置が求められるなど、設置にも細かな規定があります。
一方、避難タラップは半固定式の可動階段で、主に2階から1階への避難などに用いられます。
いずれも強度、耐久性、繰り返し展開試験などが求められる避難器具です。
避難橋という特殊な避難器具
避難橋は、隣の建物へ避難するための橋です。設置には非常に厳しい条件があります。
幅は60cm以上、手すりの高さは1.1m以上、荷重は330kg/㎡に耐えること、勾配は1/5未満、手すりの間隔は18cm以下など、建築的な安全条件が定められています。
設置例は多くありませんが、大型建物や特殊な立地条件では有効な避難手段となります。
「避難階」の考え方を理解しないと設置判断を誤る
避難階とは、直接地上へ出られる階のことを指します。
傾斜地に建てられた建物では、2階や3階が避難階になる場合もあります。この考え方を理解していないと、避難器具の設置判断を誤る原因になります。
なぜ避難器具は「あるだけ」では意味がないのか
避難器具は、パニック状態の人が使用する前提で設計されています。
そのため、複雑な器具は役に立ちません。設置環境が悪ければ使用できません。使い方を知らなければ、かえって危険になります。
防火管理者や管理者側が、設置場所と使用方法を理解しているかどうかが極めて重要です。
まとめ|避難器具は最後の命綱
避難器具は補助手段ですが、階段が使えない状況では唯一の脱出手段になります。
しかし、種類を理解していない、設置基準を知らない、使用方法を説明できないという状態では、設置されていても意味がありません。
避難器具は単なる設備ではなく、人命を守るための知識を伴う器具なのです。