【熊本消防設備】煙の正体と排煙設備の本当の役割|なぜ煙はこれほど危険なのか?

火災で人を最も危険にするのは「炎」ではなく「煙」です

消防法上、「煙」とは火災によって生じる燃焼生成物と定義されています。

難しく聞こえますが、要するに燃えた結果発生する有害なものの集合体です。

物が完全燃焼すれば主に二酸化炭素になりますが、火災のような不完全燃焼では

  • 一酸化炭素

  • 炭素の微粒子(すす)

  • 酸欠空気

  • 高温ガス

これらが大量に発生します。

これが「煙」の正体です。


煙が黒い理由と、人体への恐ろしい影響

煙が黒く見えるのは、炭素の微粒子(すす)が大量に含まれているからです。

そしてこの煙は

  • 視界を完全に奪う

  • 一酸化炭素中毒を引き起こす

  • 酸欠による窒息を引き起こす

  • 高温により気道や皮膚を損傷する

という非常に危険な性質を持っています。

さらに厄介なのはスピードです。

煙の水平移動速度は 0.5~0.75m/秒。

垂直方向への上昇速度は 1.5~3.5m/秒。

これは人の歩行速度よりも速く、階段室は数秒で煙に満たされます。


排煙設備の役割は「煙を全部出すこと」ではない

ここが非常に重要なポイントです。

排煙設備は、火災時の煙をすべて外に出す設備ではありません。

目的はただ一つ。

避難のための時間を稼ぐこと煙の充満を遅らせ、避難経路を確保するための設備です。


排煙方式は大きく2種類ある

排煙設備は方式によって分かれます。

自然排煙方式

煙の上昇力と膨張を利用して、上部の排煙口から自然に排出する方式。

構造がシンプルです。

機械排煙方式

排煙機(ファン)とダクトを使い、強制的に煙を排出する方式。

現在主流はこちらです。

火災感知器と連動する自動式と、手動開放装置による手動式があります。


防煙区画という考え方

排煙設備は単体では意味がありません。

必ず「防煙区画」とセットで考えます。

防煙区画とは煙が一気に広がらないように、面積を区切ること

この区画の中に排煙口や給気口を設けることで、煙の流れをコントロールします。


避難階段や付室が特別扱いされる理由

階段室は唯一の縦方向の避難経路です。

ここが煙で満たされたら、上階の人は逃げられません。

そのため

  • 押し出し排煙方式

  • 加圧防排煙方式

といった特別な方式が使われます。


押し出し排煙方式とは

煙を排出する部屋に給気して圧力を上げ、煙を外へ押し出す方式。

第二種排煙とも呼ばれます。


加圧防排煙方式とは

煙を排出するのではなく煙を「入れない」方式

避難階段や付室の圧力を高め、煙が侵入できないようにします。

これが最も安全性の高い方式です。

ただし圧力が高すぎると扉が開かなくなるため、

圧力調整装置(差圧ダンパー)が必要になります。


排煙ダクトには防火ダンパーが必要

火災が拡大すると、ダクトを通じて炎が広がる危険があります。

そのため、ダクト内の温度が上昇すると自動で閉じる防火ダンパーが設置されます。


まとめ

煙は炎よりも速く、人の命を奪います。

排煙設備は煙を無くすためではなく、煙の広がりを遅らせるための設備です。

そしてその効果を最大限にするために

  • 防煙区画

  • 排煙方式

  • 加圧防排煙

  • 圧力調整装置

これらが組み合わされています。

この仕組みを理解していると、排煙設備の見方が大きく変わります。

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