介助がなければ避難できない者とは何か|スプリンクラー設備における考え方を解説

介助がなければ避難できない者とは何か

スプリンクラー設備の設置基準を考える際には、防火対象物の用途や面積だけでなく、そこに入所する者の状態をどのように捉えるかも重要になります。その中で確認しておきたいのが、「介助がなければ避難できない者」という考え方です。

この考え方は、単に高齢者施設や福祉施設であるというだけで直ちに決まるものではありません。入所する者がどのような状態にあるのかを踏まえ、一定の基準に照らして判断することになります。そのため、施設の名称や一般的な印象だけで判断するのではなく、示されている対象者や認定調査項目の内容に沿って確認することが大切です。

また、この考え方には、乳児や幼児のように年齢に着目して把握される者と、認定調査項目によって状態を確認する者の両方が含まれています。したがって、身体的な移動能力だけでなく、危険の認識や説明の理解、行動面の状態まで含めて見ていく必要があります。

対象となる者は施設の種類と入所者の状態をあわせて確認します

「介助がなければ避難できない者」とされる対象には、まず乳児および幼児が含まれています。これに加えて、別表第1の(6)項ロのうち、一定の施設に入所する者についても対象となります。

示されているのは、別表第1(6)項ロの(2)、(4)及び(5)に規定する施設に入所する者です。ただし、同じ(6)項ロ(5)に規定する施設であっても、その対象は無制限ではありません。この場合は、同項に規定する避難が困難な障害者等に限るとされています。

この点からわかるのは、「介助がなければ避難できない者」は、施設用途に該当するすべての入所者を一律に指すものではないということです。施設の種別を確認したうえで、その中のどのような者が対象になるのかまで見ていく必要があります。

判定は認定調査項目を基準として行われます

対象となる者の判定では、認定調査項目が用いられています。したがって、「介助がなければ避難できないかどうか」は、抽象的な印象で決めるものではなく、一定の調査項目に基づいて確認することになります。

示されている認定調査項目は、「移乗」「移動」「危険の認識」「説明の理解」「多動・行動停止」「不安定な行動」です。これらは、身体機能に関する項目だけでなく、認知面や行動面に関する項目も含んでいます。

そのため、避難の可否を考える際には、自力で歩けるかどうかだけで判断することは適切ではありません。避難時の行動を成り立たせるうえで必要となる理解力や危険認識、行動の安定性も含めて判断することが前提になります。

「移乗」と「移動」は身体の移動に関する項目として示されています

「移乗」と「移動」は、避難の際に身体をどのように移せるか、移動できるかという基本的な能力に関わる項目です。

「移乗」については、「支援が不要」又は「見守り等の支援が必要」に該当しない者が対象とされています。したがって、支援なしで移乗できる者や、見守り等の支援で足りる者は、ここでいう対象には含まれないことになります。反対に、それを超える支援を要する場合には、この項目に基づく対象となります。

「移動」についても同様で、「支援が不要」又は「見守り等の支援が必要」に該当しない者が対象です。移動そのものにより強い支援が必要な場合には、避難時に第三者の介助が必要になる可能性が高く、そのことがこの基準に反映されています。

「危険の認識」と「説明の理解」も判定項目として示されています

避難を考えるうえでは、身体を動かせるかどうかだけでなく、火災時の危険をどのように認識できるか、避難に関する説明を理解できるかも重要です。そのため、「危険の認識」と「説明の理解」も判定項目として示されています。

「危険の認識」については、「支援が不要」又は「部分的な支援が必要」に該当しない者が対象とされています。つまり、危険を認識するうえで、支援が不要な者や部分的な支援で足りる者は対象外であり、それを超える支援を要する場合が対象となります。

また、「説明の理解」については、「理解できる」に該当しない者が対象です。この項目は、避難誘導の指示や説明を理解し、それに応じて行動できるかどうかに関わるものです。そのため、移動能力に問題がなくても、説明を理解できない状態であれば、避難の場面では介助が必要になることがあります。

「多動・行動停止」と「不安定な行動」も確認項目に含まれています

避難時には、移動能力や理解力だけでなく、落ち着いて行動できるかどうかも重要になります。そのため、「多動・行動停止」と「不安定な行動」も確認項目に含まれています。

「多動・行動停止」については、「支援が不要」に該当しない者が対象とされています。つまり、この項目について支援が必要である場合には、避難の際に単独で適切な行動をとることが難しいと考えられます。

「不安定な行動」についても、「支援が不要」に該当しない者が対象です。避難は、移動能力だけで成立するものではなく、危険時に落ち着いて行動し、誘導に応じることができるかどうかも重要になります。そのため、行動の不安定さも判定要素として組み込まれています。

身体機能だけでなく認知面や行動面も含めて見ることが必要です

ここまでの認定調査項目を見ると、「介助がなければ避難できない者」の判断は、身体機能だけで行われているわけではないことがわかります。移乗や移動に関する項目はもちろん重要ですが、それだけではありません。

危険の認識や説明の理解は、火災時に何が起きているかを把握し、避難のための指示を理解して行動に移せるかどうかに関わります。また、多動・行動停止や不安定な行動は、避難時の行動の安定性や継続性に関わります。これらはいずれも、避難の可否を考えるうえで欠かすことのできない要素です。

そのため、「歩けるかどうか」や「車いすかどうか」といった一面だけで判断するのではなく、示された各項目を通じて、避難に必要な能力を全体として見ていくことが必要です。

判定は施設用途と個々の状態の両方を踏まえて行うことが大切です

この考え方を確認する際は、まず対象となる施設用途に該当するかを見たうえで、その入所者が示された認定調査項目の要件に当てはまるかを確認する流れになります。どちらか一方だけでは足りず、施設用途と個々の状態の両方をあわせて見ることが必要です。

また、認定調査項目には、それぞれ「支援が不要」「見守り等の支援が必要」「部分的な支援が必要」「理解できる」といった区分があり、どの区分に該当しない者を対象とするかが具体的に示されています。このため、基準の読み取りでは、どの項目でどの区分が基準になっているかを正確に確認することが欠かせません。

対象となる者の範囲を広く捉えすぎると、本来の基準より広い理解になってしまいます。逆に狭く捉えすぎると、必要な配慮を見落とすおそれがあります。そのため、示された文言に沿って丁寧に確認することが大切です。

まとめ

「介助がなければ避難できない者」とは、乳児、幼児のほか、一定の施設に入所する者のうち、認定調査項目に照らして避難に介助を要すると考えられる者を指します。ただし、施設に入所しているという事実だけで直ちに決まるものではなく、施設用途と個々の状態をあわせて確認することが必要です。

認定調査項目としては、「移乗」「移動」「危険の認識」「説明の理解」「多動・行動停止」「不安定な行動」が示されており、それぞれについて、どの区分に該当しない者を対象とするかが定められています。このことからも、判断は身体的な移動能力だけでなく、認知面や行動面を含めて行われることがわかります。

したがって、この考え方を用いる際は、対象施設の範囲、入所者の状態、認定調査項目ごとの要件を丁寧に確認しながら、基準に沿って判断することが大切です。

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