スプリンクラー設備の設置を要しないものとすることができる階とは何か|一定の区画による取扱いを解説
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スプリンクラー設備の設置を要しないものとすることができる階とは何か
スプリンクラー設備の設置基準を確認する際は、建物全体に一律に同じ条件がかかると考えるのではなく、どの階にどの用途部分があり、どのような区画が設けられているかをあわせて確認することが大切です。その中で押さえておきたいのが、一定の区画を設けた場合に、特定の階を除く10階以下の階についてスプリンクラー設備の設置を要しないものとすることができるという考え方です。
この取扱いは、11階建て以上で令別表第1(5)項ロの用途に供される部分が存する(16)項イの防火対象物のうち、一定の条件に当てはまるものについて示されています。対象となる建物であっても、すべての階が同じ扱いになるわけではなく、11階以上の階と10階以下の階とで考え方が分かれています。
また、ここでいう設置を要しないものとすることができる階の取扱いは、単に用途が該当するというだけで認められるものではありません。一定の区画を設けることが前提であり、その区画には壁や床の構造、内装仕上げ、開口部の面積、開口部に設ける戸の仕様、住戸利用施設の各独立部分の床面積など、複数の条件が定められています。そのため、この取扱いを考える際は、階の条件と区画の条件を一体として確認する必要があります。
対象となるのは11階建て以上の一定の防火対象物です
対象となるのは、11階建て以上で令別表第1(5)項ロの用途に供される部分が存する(16)項イの防火対象物のうち、同表(5)項イ並びに(6)項ロ及びハのうち居住型福祉施設に限る用途に供される部分があるものです。
ここでいう居住型福祉施設として示されているのは、有料老人ホーム、福祉ホーム、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は共同生活援助を行う施設です。したがって、対象となるかどうかを考える際は、単に高齢者施設や福祉施設という大まかな分類で見るのではなく、示された用途に該当するかを確認することが必要です。
この取扱いは、こうした用途に供される部分が存在する建物について、一定の区画を設けた場合には、特定の階を除く10階以下の階についてスプリンクラー設備の設置を要しないものとすることができるというものです。つまり、建物全体の設置要否を一括して決めるものではなく、対象用途の存在と区画条件を前提に、階ごとに見ていく考え方です。
11階以上の階は設置が必要な部分として扱われます
11階以上の階は、スプリンクラー設備の設置が必要な部分として扱われます。このことから、一定の区画による取扱いが認められる場合であっても、11階以上の階まで広く設置不要になるわけではないことがわかります。
つまり、この制度の中心は、10階以下の階をどのように扱うかにあります。11階以上の階については、基本的にスプリンクラー設備の設置が必要な部分として見たうえで、10階以下の各部分について一定の区画が設けられているかどうかを確認し、設置を要しないものとすることができる階に当たるかを判断することになります。
そのため、建物全体の計画を考える際は、11階以上と10階以下を同じ前提で見るのではなく、まず11階以上の取扱いを押さえたうえで、10階以下の階ごとの条件を確認する流れが重要になります。
10階以下の階でも対象とならない部分があります
一定の区画を設けることにより10階以下の階について設置を要しないものとすることができるとされていても、10階以下のすべての階が当然にその対象となるわけではありません。除かれる階が明示されています。
一つは、住戸利用施設の床面積の合計が3,000㎡以上となる防火対象物の階のうち、当該部分が存する3階です。したがって、10階以下であっても、住戸利用施設の床面積の合計が3,000㎡以上となる場合には、そのうち当該部分が存在する3階は対象外となります。
もう一つは、住戸利用施設が1,000㎡以上存する地階、無窓階及び1,500㎡以上存する4階以上10階以下の階です。この点からも、10階以下であることだけでは足りず、どの階にどの程度の床面積の住戸利用施設が存するかまで確認する必要があることがわかります。
このように、10階以下の階の取扱いを考える際は、単に階数だけでなく、住戸利用施設の床面積の合計や、各階に存する面積をあわせて確認しなければなりません。
一定の区画には耐火構造の壁及び床による区画が必要です
一定の区画の要件として、まず求められているのは、(5)項ロの用途に供される部分を含む居室を、耐火構造の壁及び床で区画することです。
この条件からわかるのは、単に室を区切っていれば足りるのではなく、区画の構造自体に耐火性能が求められているということです。したがって、設置を要しないものとすることができる階の取扱いを受けるためには、用途や床面積の条件だけでなく、区画の壁と床が耐火構造であるかどうかを確認する必要があります。
区画の考え方は、建物全体のどこに対象部分があるかを見るだけでなく、その部分がどのような構造で囲われているかまで含めて判断するものです。そのため、平面計画だけでなく、構造区分の確認も欠かせません。
室内の仕上げと通路部分の仕上げには異なる条件があります
一定の区画の要件では、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げは難燃材料とされています。ただし、地上に通ずる主たる廊下その他の通路にあっては準不燃材料とされています。
この点は重要です。室内の仕上げと、避難経路となる通路部分の仕上げとは、同じ条件ではありません。通路部分にはより厳しい条件が求められており、避難経路としての安全性を意識した構成になっています。
したがって、区画条件を確認する際は、室内の仕上げだけを見れば足りるわけではなく、地上に通ずる主たる廊下その他の通路の仕上げが準不燃材料になっているかまで確認することが必要です。
開口部は合計8㎡以下で一の開口部は4㎡以下です
一定の区画では、区画する壁及び床の開口部の面積にも条件があります。求められているのは、開口部の面積の合計が8㎡以下であり、かつ、一の開口部の面積が4㎡以下であることです。
このため、開口部の確認では、一つひとつの開口部が4㎡以下に収まっているかを見るだけでは足りません。複数の開口部がある場合には、それらを合計した面積が8㎡以下に収まっているかも確認しなければなりません。
この点は、開口部の管理が単独要件と合計要件の両方で構成されていることを示しています。したがって、設計や確認の際には、開口部を個別に見るだけでなく、区画全体としてどの程度の開口があるのかを把握する必要があります。
開口部に設ける戸の仕様にも条件があります
開口部については、面積だけでなく、そこに設ける戸の仕様にも条件があります。開口部には特定防火設備である防火戸を設けることが必要です。
また、廊下と階段とを区画する部分以外の開口部については、防火シャッターを除くものとされています。戸の閉鎖方法についても条件があり、随時開くことができる自動閉鎖装置付きのものなど、求められる仕様に適合していることが必要です。
このことから、開口部は単に面積の条件を満たしていれば足りるのではなく、どのような戸が設けられているかまで含めて確認する必要があります。区画の成立は、壁や床の構造だけでなく、開口部の閉鎖性能によっても左右されるためです。
住戸利用施設の各独立部分は100㎡以下であることが必要です
一定の区画の要件として、住戸利用施設の各独立部分の床面積がいずれも100㎡以下であることも求められています。ここでいう各独立部分とは、構造上区分された数個の部分の各部分で独立して当該用途に供されることができるものをいうとされています。
この条件は、単に一の階全体の床面積を見るのではなく、その内部で独立して利用される各部分の規模にも着目していることを示しています。したがって、全体面積が条件内に収まっていても、住戸利用施設の各独立部分の床面積が100㎡を超えていれば、この要件には適合しません。
そのため、確認の際は、建物全体や階全体の面積だけでなく、構造上区分された各独立部分の規模まで含めて見ていくことが必要です。
判断の際は階数だけでなく面積と区画条件をあわせて見ることが大切です
ここまで見てきたように、スプリンクラー設備の設置を要しないものとすることができる階の取扱いは、単に10階以下かどうかで決まるものではありません。対象となる建物用途、11階以上の階の取扱い、10階以下でも対象とならない階、住戸利用施設の床面積、一定の区画の構造、開口部の面積、戸の仕様、住戸利用施設の各独立部分の床面積といった複数の条件をあわせて確認する必要があります。
特に、10階以下の階であっても、3階、地階、無窓階、4階以上10階以下の階のうち、一定以上の床面積がある場合には対象とならないことから、階数だけで機械的に判断することはできません。また、一定の区画についても、壁及び床の耐火構造、仕上げ、開口部、戸、各独立部分の面積まで細かく条件が定められています。
そのため、この取扱いを考える際は、階数だけを見て判断するのではなく、面積条件と区画条件を一体として確認することが大切です。
まとめ
スプリンクラー設備の設置を要しないものとすることができる階の取扱いは、11階建て以上で令別表第1(5)項ロの用途に供される部分が存する(16)項イの防火対象物のうち、一定の条件を満たすものについて示されています。一定の区画を設けた場合には、特定の階を除く10階以下の階について設置を要しないものとすることができる一方で、11階以上の階は設置が必要な部分として扱われます。
また、10階以下であっても、住戸利用施設の床面積の合計が3,000㎡以上となる防火対象物の3階、住戸利用施設が1,000㎡以上存する地階や無窓階、住戸利用施設が1,500㎡以上存する4階以上10階以下の階は対象外です。
さらに、一定の区画には、耐火構造の壁及び床、難燃材料又は準不燃材料による仕上げ、開口部の合計8㎡以下、一の開口部4㎡以下、戸の仕様、住戸利用施設の各独立部分100㎡以下といった条件があります。したがって、この取扱いを用いる際は、用途、階数、床面積、区画条件をあわせて確認しながら判断することが大切です。